連載「自分専属のAI秘書を作る」第1回

自分専属のAI秘書を作る 第1回: 任せる仕事を決めて、合図と指示書で秘書の人格を固定する

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朝、AIに「おはよう」と打つと、今日の予定と未処理のタスクと近い締切がまとまって返ってくる。僕は毎朝これで一日を始めている。この連載では、そういう「自分専属のAI秘書」をゼロから組み上げる過程を全4回でやる。第1回の今日は、秘書に何を任せるかを決めて、合図で動くようにして、指示書で秘書の人格を固定するところまで。ここまでで「毎朝ブリーフィングをくれる秘書」は動き始める。

道具はClaude Codeを使うけど、考え方はどのAIツールでもだいたい同じだ。

そもそも作ろうと思ったきっかけは、予定調整が面倒くさすぎたことだった。もらったメッセージをそのままAIに投げると、候補を突き合わせて返信の文面まで考えてくれる。あの「自分でやらなくていい」の最初の一回が効いて、じゃあ朝のブリーフィングも、タスクの見張りも任せよう、とだんだん広がっていった。秘書作りは、たいていこういう小さな「面倒」から始まる。

先にこの連載全体の狙いを言っておく。押さえてほしいのは細かい設定の丸暗記じゃなくて、「どういう考え方で、AIに何を任せて、何を指示すればいいか」という基本の型だ。というのも、秘書の構築も運用も、最終的にはAI自身に丸投げできる。全部を自分の手でやり続ける必要はない。型さえ掴めば、あとは「こうしたい」と頼むだけで組み上がっていく。4回を通してその型を渡すつもりで書いていく。

結論 自分専属のAI秘書を作る連載の第1回。何を任せるかを決め、「合図」で動かし、指示書で秘書の人格と流儀を固定する。まずは役割と振る舞いを決めるところから。

秘書に何を任せるか

先に結論を言うと、任せるのは「記憶」と「見張り」だ。判断は渡さない。

僕が秘書に任せているのはこの4つ。

  1. 毎朝の予定まとめ。今日どこで何があるかを一覧にする。
  2. タスクの管理。追加・完了・一覧を口頭(というかチャット)で頼めるようにする。
  3. 締切の見張り。近づいてきたものを向こうから言わせる。
  4. 今日やることの提案。3つまで、と数を絞らせる。

共通しているのは、どれも「自分が覚えておく」をやめて外に出す、ということだ。予定もタスクも締切も、頭の中だけで管理していると、覚えているつもりのものほど抜ける。締切の前日に急に思い出して肝が冷える、みたいな経験は誰でも一度はあると思う。しかも「忘れないようにしなきゃ」と頭の隅で保持し続けること自体が地味に消耗する。だからそこを丸ごと秘書に渡して、自分は目の前のことだけ考える。

ちなみにタスクの置き場は、最初はただのテキストファイルで十分だ。秘書用フォルダに「タスク.md」を1枚置いて、「〇〇追加しといて」でそこに1行足させて、「終わった」で消させる。僕は今は自作のタスク管理アプリに移したけど、テキスト1枚の運用でも数か月は普通に回っていた。専用ツールから考え始めると腰が重くなるので、まずファイル1枚でいい。

ファイルに書き出すのには、もう一つ大事な理由がある。AIのチャットは、会話が長くなると昔のやり取りを忘れる。実際、新しいセッションで「この前の続きから」と頼んだら、4日前までの進捗しか把握していなかったり、とっくに提出した書類を「早く出してください」と催促してきたり、ということが普通に起きる。だから「今どこまで進んだか」は、AIの記憶任せにせず、テキストに書き出して外に置く。秘書に記憶を任せるというのは、AIの頭の中に覚えさせることじゃなくて、消えない場所に書かせて、それを毎回読ませることなんだ。この「記憶の外部化」こそが、秘書を長く使える土台になる。

逆に、何をやるかの最終判断、人に送る文面の確定、お金が動く操作。この辺は渡さない。ここの線引きは第4回でちゃんとやるけど、最初から「記憶と見張りは秘書、判断は自分」と決めておくと迷わない。

あと「今日の一手」を3つまでに絞らせるのは地味に効く。タスク一覧を全部見せられても朝から気が重くなるだけで、結局どれからやるか自分で悩むことになる。「今日はまずこの3つ」まで秘書に絞らせると、朝の立ち上がりが速い。

合図で動かす

秘書ができたら、毎回長い指示を打つんじゃなくて、短い合図で決まった動きが出るようにする。

僕の場合、「おはよう」の一言が朝のブリーフィングの合図だ。返ってくる順番も決めてあって、今日のカレンダー予定、未処理のタスク、締切が近いもの、今日の一手(3つまで)、の順。イメージとしてはこういう返事が来る。

おはよう!

今日の予定
- 10:00 打ち合わせ(オンライン)
- 15:00 外出あり。14:30には出る

未処理タスク: 5件(うち今日締切 1件)

近い締切
- レポート提出 … 明日(金)
- 申込書の返送 … 3日後(日)

今日の一手
1. レポートの残り2章を書く
2. 申込書を書いて封筒に入れる
3. 打ち合わせのメモを整理する

毎朝同じ形式で返ってくるから、読む方も一瞬で頭に入る。締切に曜日が付いているのもわざとで、「明日」とだけ言われるより「明日(金)」の方が体感の距離が正確になる。この形式自体も、後述の指示書に書いておけば固定できる。

合図はこんな感じで対応を決めている。

場面            合図                返すもの
一日の始まり     「おはよう」         予定 → タスク → 締切 → 今日の一手
一日の終わり     「今日どうだった?」   一日の記録の下書き
思いついたとき   「〇〇やっといて」    実行して、判断が要る点だけ確認リスト
迷っているとき   「ちょっと相談」      タスク化せずに、まず聞く

ポイントは2つ。

1つ目は、合図を決めておくと毎回細かく指示しなくていい、ということ。「カレンダーを見て、それからタスク一覧を出して、締切順に並べて」と毎朝打つのは秘書を雇った意味がない。「おはよう」だけで全部走るのが正しい。

2つ目は、「相談」を合図に入れておくこと。何でもすぐタスク化されると、まだ固まってない考えを話しづらくなる。「これは壁打ちだから、まず聞いて」というモードを最初から用意しておくと、秘書が思考の相手にもなる。

ちなみにカレンダー予定の読み取りは、AIと外部サービスを繋ぐ仕組み(MCPという)の設定が要る。その話は第4回でまとめてやるので、今日のところは朝イチにカレンダーの今日の画面を貼り付けるのでも十分動く。

人格と流儀を指示書で固定する

で、ここが第1回の本丸。合図と流儀を毎回説明していたら意味がないので、指示書に書いて固定する。

仕組みは単純で、Claude Codeを立ち上げるフォルダに「CLAUDE.md」というファイルを置いておくと、AIは起動時にそれを自動で読む。ただのテキストファイルだ。別の連載「Obsidianを第二の脳に」で保管庫の運用ルールをAIに読ませたのと同じ仕組みで、あれの秘書版だと思えばいい。

手順はこう。

  1. 秘書用のフォルダを一つ作る。名前はなんでもいいけど、書類やメモを置いているフォルダを使うと、秘書がそれらを読めるようになるので都合がいい。
  2. そのフォルダでClaude Codeを立ち上げる。
  3. フォルダ直下に「CLAUDE.md」というファイルを作って、秘書としての振る舞いを書く。自分で書いてもいいし、「こういう秘書にしたい」と口で説明してAI本人に書かせてもいい。僕は骨組みをAIに書かせてから手で直した。
  4. 一度セッションを立ち上げ直して、「おはよう」と打ってみる。指示書どおりのブリーフィングが返ってきたら成功だ。

ファイルを作るあたりで面倒そうだと感じても、身構えなくていい。この手順自体、「秘書用のフォルダとCLAUDE.mdを作って」とAIに言えば向こうがやってくれる。こっちの仕事は、中身の方針を決めることだけだ。

指示書の骨組みはこんな感じ。そのまま流用して、中身を自分用に書き換えてほしい。

# 秘書モード: このフォルダで開くセッション共通の振る舞い

あなたは僕専属の秘書。生活の柱は 勉強 / 仕事 / 趣味。
(↑自分の生活に合わせて書き換える)

## 合図と応答
- 「おはよう」→ 今日の予定 → 未処理タスク → 近い締切 → 今日の一手(3つまで)
- 「今日どうだった?」→ 一日の記録の下書きを作る
- 「〇〇やっといて」→ 即実行。判断が要る点だけ後で確認リストにまとめる
- 相談・雑談 → すぐタスク化せず、まず聞く

## 流儀
- 結論から1〜2文で。長い報告は要約 → 詳細の順
- 締切・矛盾・忘れ物に気づいたら先回りして一言添える(押し付けない)
- 依頼が曖昧なときは、推測で2案作る前に1問だけ確認する

## 安全
- ファイルの削除・外部への送信・課金・カレンダーへの書き込みは必ず事前確認

上から順に補足する。

冒頭の「生活の柱」は、秘書に自分の生活の全体像を先に渡すための一文だ。これがあると、タスクの優先度の相談をしたときに「趣味の予定より締切のある仕事が先では」みたいな、文脈を踏まえた返しが来るようになる。

「流儀」の節は、要するに人間の秘書に最初に伝える働き方の希望と同じだ。僕は報告が長いのが嫌いなので「結論から1〜2文で」を入れているし、抜け漏れを拾ってほしいので「先回りして一言」を入れている。ここは完全に好みでいい。書いた分だけ、毎回の説明が要らなくなる。

「安全」の節だけは好みじゃなくて必須だと思ってほしい。秘書に任せる範囲が広がるほど、勝手にやられたら困る操作も増える。削除・送信・課金・予定の書き込みあたりは「必ず事前確認」と明文化しておく。AIは指示書に書いてあることはかなり律儀に守るので、この4行があるだけで安心感が全然違う。

一度書けば、以降は毎回この人格で立ち上がる。「秘書を作る」というと大掛かりに聞こえるけど、実体はテキストファイル1枚だ。逆に言うと、このファイルを育てていくことが秘書を育てることそのものになる。使っていて「そうじゃない」と思った瞬間に指示書に1行足す。これを繰り返すと、秘書がどんどん自分に馴染んでくる。

次回から

ここまでで、合図で動いて、決まった流儀で返してくる秘書ができた。ただ今の状態だと、セッションを閉じれば会話の中身は忘れる。第2回はそこをやる。会話で判明した好みや決定事項を秘書自身にメモさせて、次のセッションに引き継ぐ「記憶」の仕組みだ。第3回は常時稼働と定期実行。「おはよう」と打たなくても、常時稼働のPC(僕は「箱」と呼んでいる)が毎朝勝手にブリーフィングを作って置いておく話。第4回は外部連携と安全で、カレンダーやタスク管理アプリとの接続と、どこまで任せてどこから確認を挟むかの線引きをやる。

まずは指示書1枚から。今日「おはよう」に返事が来るところまで行けたら上出来だ!

それと、繰り返しになるけど指示書もAIに書かせていい。大事なのは「何を任せて、どう振る舞ってほしいか」を自分の言葉で決めることで、手を動かす係はもう目の前にいる。

よくある質問

AI秘書には何を任せられる?

予定の確認、タスク管理、調べ物の要約、日々の記録など。まず「これは任せる/これは自分でやる」を決めるのが最初の一歩になる。

AIの応答をいつも同じスタイルにするには?

指示書(AIに常に読ませるファイル)に人格・口調・流儀を書いて固定する。毎回説明しなくても、同じキャラで動いてくれる。

AI秘書の「合図」とは?

「おはよう」「今日は?」のような決まった言葉で、決まった動き(朝のブリーフィング等)をさせる仕組み。合図を決めておくと使い方が固定される。